June 17, 2006

マクロビと玄米 6)発芽玄米 前編

人間が、お米を食べてきた歴史は古い。
それこそ何千年もの長いつきあい。

でも、玄米を発芽させて食べる【発芽玄米】の歴史は
ずっと新しいんです。


 ■発芽玄米はじめて物語■

昭和に起きた大水害のひとつに、「有田水害」があります。
昭和28年7月17日、未明から降り続いた大雨で、
和歌山県の有田川が大洪水を起こします。

水害2









当時まだ治水されていなかった有田川は、かなり広い範囲の町を
水の中に飲み込み、多く死傷者を出す大災害になりました。

水害1










この時、水の中に浸かってしまった米蔵がありました。
商品の玄米は水浸し。
お米さんは、さぞ嘆いたでしょう。

「あー、これでは売ることが出来ん。
 こっちの玄米は芽が出てる。うーん。
 ・・もったいないから食べてしまうか?」

とりあえず、炊いてみると・・うん、食える。食える。

売りモンにならん玄米。
しかし食べているとなんだか体の調子が良い。
長年の持病も治ってしまった。
「これはどうも発芽した玄米を食べたのが原因ではないか?」
・ということになりました。

この話は全国に広まって、のちに発芽玄米の効能は科学的にも証明されます。

1999年10月、ファンケル社が発芽玄米を商品化。
翌年、テレビや雑誌で取り上げられるようになると、一躍ブームになりました。
今では、たくさんのメーカーから発芽玄米の商品が出ています。

でも・・高いんですよね。


 ■常温水発芽法■

一般に市販されている発芽玄米は、発芽活性させた玄米を蒸して、
発芽を止め、乾燥させたもので、非常に高価です。
値段が高いから、ちょっとだけを白米に混ぜて、食べてる人が多いようです。
また、メーカーの発芽玄米の中には、古米や古々米を使っているものもあるとか。

GABAやアミノ酸を補うための<サプリメント>としての食事はちょっと違うと思うし、古々米はイヤだなぁというのが、正直なところ。

「じゃあ、自分で発芽させてしまえば良いんじゃありませんか?」という人。

半分正解です。

基本的に玄米を水に浸ければ、発芽します。
自分で作れば、お財布にもやさしい。
ごはん茶碗に『全部発芽玄米・山盛り』という贅沢も可能だし、
好きな銘柄の新米で、発芽したてなんて、とっても体に良さそう。

「でも、半分正解ってなんで?」と思う人。

自分で発芽玄米を作る人は、あんまりいないでしょう?
理由は簡単。
とっても大変だからです!


発芽玄米を作る方法はいくつかありますが、
一般的なものは、常温の水に長時間玄米を浸け込む【常温水発芽法】です。

人によっては、丸2日浸け込みます。
その間、3〜4時間おきの「水替え」が必要になります。

もっと長いサイクル(8〜12時間)で浸け込む方法もありますが、
水が劣化しやすく、玄米の味が悪くなるばかりか、
黄色ぶどう球菌などの食中毒菌に、汚染されやすくなります。
(塩を入れると、吸水ペースは落ちますが汚染のリスクは少なくなります)

日中、仕事のある人は、ちょっと無理があるかもしれません。
仮に1回やってみたとして、毎日それが出来るか?・と云われると、
それも無理っぽい。
三日坊主な主夫の僕には、大きく無理

別な方法も探してみましょうか。


 ■低温水発芽法■

玄米にはもうひとつの発芽法があります。
それが【低温水発芽法】

この方法は玄米を洗って、水に浸けたものを、
密封容器(タッパー)に入れて、冷蔵庫の野菜室(約5℃)
長時間かけて発芽させるものです。
低温で発芽させるため、夏場でも水が悪くなりにくく、
細菌汚染のリスクもほとんどありません。

24時間から48時間。
浸ける時間は人によってバラツキがあります。
実際、どのくらいの時間で吸水できるのでしょうか?

200gの玄米のサンプルを吸水させてデータを取ってみました。

低温グラフ













吸水量は、元の玄米の約35%前後。
「最初の2分間の洗米」だけで、そのうちの1/3を吸水してしまいます。
その後、「4時間の吸水」で、さらに1/3。
後はゆっくり吸水が進み、完全な吸水が出来るのは24〜27時間後です。

前の日から浸けておいて、24時間。
使ったら次の日の分を浸けておくというサイクルでやっている人が、
多いようです。


しかし、【低温水発芽法】には疑問点が残りました。
発芽が全く見られないのです。
72時間、浸水させても、発芽の兆候はありません。

発芽が見られなくても、栄養価は変化しているという人もいますし、
この方法を実際採用している人も多いでしょう。

しかし冷蔵庫で低温吸水させる【低温水発芽法】では、
「発芽玄米は作れない」というのが、僕の結論です。

その理由と対策については、後編でお話ししますね。


 「マクロビと玄米 7)発芽玄米 後編」に続く

vegetus at 06:26│Comments(37)TrackBack(0)clip!マクロ本 

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この記事へのコメント

1. Posted by マクロ美風   June 17, 2006 06:56
おー、papaさん、ついに登場ですね!
渾身の力作が!

いっぱい書きたいけれど、時間がないので、九州から帰って来たら書きます。

みんなの反応が楽しみですね〜。

お疲れなのに、記事のUPありがとうございました。
私達が、papaさんの顔を見るたびに催促しちゃったから・・・ゴメンネ。

では、九州に行ってきま〜す。
2. Posted by マクロ美風   June 17, 2006 06:58
papaさん、コメントが届かないみたい。
反映されないよ〜ん(泣)
3. Posted by macrobi papa   June 17, 2006 10:09
こんにちは、ふうさん。

ふうさんのコメントが反映してないみたいですね。
また故障でしょうか・・
4. Posted by macrobi papa   June 17, 2006 10:13
おお、出た出た。
僕がコメント書くと一緒に出力されるみたいですね。

これから九州ですか。
お疲れ様です。

催促は良いんですよ。
そうでもしないと記事が書けないので。
ただ次の記事(後編)を書くためのエネルギーを溜めないと。
5. Posted by 鍼美人   June 17, 2006 18:00
自分で発芽玄米を作ろう!
とは 決して思わない私・・・
やはり 大変なのですね

美味しい物をつくるのは それなりの努力が労力が必要となります
特に都会のこれからの季節は 温度管理が難しい

後編 楽しみにしています
6. Posted by Lucky   June 17, 2006 19:24
papaさん、待っていました!
実は私、昨年同じように発芽玄米について調べていまして、常温水発芽法で失敗し、これは毎日は無理と思い、低温水発芽法を試したことがあるのです。3回も。
でも、毎回疑問でした。これは、発芽玄米になっているのかと?見た目には、そうとは見えなかったからです。そして、3回目の時には、5日間水だけ取り替えながら放置していましたら・・・腐りました。で、それ以来あきらめていたのですが。。

後編も、首をなが〜くして待っております。
7. Posted by 透鼓   June 17, 2006 22:35
こんばんは。
横森理香さんが『地味めしダイエット』の中で
紹介してましたけど、ありゃダメなんですね。
あや〜っ。。
後半を楽しみにしてま〜す。
8. Posted by petit-MAME   June 18, 2006 21:53
はじめまして、nantenです。
いつも楽しく拝見しています(^o^)/
マクロビ生活に移行する際には大変参考にさせて頂きました!ありがとうございます!
今「発芽玄米」を使っている身としては続きが気になります…。
後半楽しみにしています。

9. Posted by macrobi papa   June 19, 2006 01:01
こんばんは、鍼美人さん。

美味しいものは、大変で、労力が必要で、努力で難しい。
そういう風に思わせるように、この記事は書いてあります。
後編をお楽しみに♪
10. Posted by macrobi papa   June 19, 2006 01:07
こんばんは、Luckyさん。

「バナナマフィン、旨そうだ」と僕の奥さんが申しておりました。
それにしても腐るまで浸けるとは、さすがですね。
参考になりました。
低温法を否定するかどうかは3ヶ月くらい悩んでました。
その道の専門家に相談したり、大学の教授にアドバイスを仰いだり。でも、何度試しても「違うな」と感じるのです。
完成された発芽玄米は、トウモロコシの味と香りがあります。それに到達することは一度もありませんでした。

じゃあ、どうするか?が後編の課題です。

11. Posted by macrobi papa   June 19, 2006 01:11
こんばんは、透鼓サン。
「後半」でも「後編」でも良いのです。
こうしてコメントをもらえるだけで、何より幸せなのです。
ワールドカップが熱いですから、「後半」とか「前半」などの云い方がむしろタイムリーかと。

フォローが訳分からない方向に流れたところで、頑張って続き書きます。
12. Posted by macrobi papa   June 19, 2006 01:15
はじめまして、nantenさん。

そういってもらえると光栄です。
マクロビは自然であるのが一番かと思います。
努力しない。
当たり前にマクロビというか、気づいたらマクロビ。

だから発芽玄米をやるにしても、「簡単」「お気軽」であることが大切だと思うのです。
13. Posted by macrobi papa   June 19, 2006 01:15
はじめまして、nantenさん。

そういってもらえると光栄です。
マクロビは自然であるのが一番かと思います。
努力しない。
当たり前にマクロビというか、気づいたらマクロビ。

だから発芽玄米をやるにしても、「簡単」「お気軽」であることが大切だと思うのです。
14. Posted by らるご   June 19, 2006 04:43
macrobi_papaさん、おはようございます♪

自家製発芽玄米レポート、興味津々です
この時期は、常温で玄米を水に漬けておくのをためらってしまいますし
後編も楽しみにしていますね♪

昔の記事でじーんときていただけて嬉しいです(^^;
私もpapaさんの記事、参考にさせていただいています
余談ですが、私もボウイ、好きだったりします
(奥さまともお話合いそう♪)
15. Posted by rurikoi   June 19, 2006 07:12
うちも冷蔵庫で一日おいてから炊いていました。
でも 発芽させるには温度もたいせつなんですよね。いなかにいたころ 苗を作るのに お風呂の残り湯にもみをつけて発芽させていましたもの。
おいしい発芽米の作り方 楽しみにしています。
16. Posted by なちゅーる   June 19, 2006 11:33
こんにちは。
私も2日程浸け置きして発芽玄米を作っています。
初めは偶然でした(^^;
お米を洗ったものの違うメニューになり2日経過したお米をみたらピコッと芽が出ていた!
暑くなって来るとお水が劣化するので気になっていました。データ参考にさせていただきます!
17. Posted by さくらすみれ   June 19, 2006 15:14
papaさん、またまたスゴイ論文(?)を発表して下さいましたね〜(笑い)!データのグラフまであって、頭が下がります。
私もよく玄米勧めた友人に発芽玄米って?玄米と違うの?などと質問されるのですが、そのたびにシドロモドロになっておりましたが(勉強足りませんね〜)これからは、胸張ってpapaさんの記事を紹介させて頂きますね。(もう恐いものナシ?)
勿論、後半?後編?楽しみにしておりますよ〜。
18. Posted by オリーブ   June 19, 2006 15:38
こんにちは、papaさん。
私は昨年からずっと、自分で発芽させて作っています。
専業主婦なので3〜4時間おきの水換えも出来るんですが、教えてあげた人たちにはそれが面倒だと敬遠されますね。
でもこれだと有機栽培の玄米を選んで作れますし、有名なF社のは有機栽培ではないと聞きましたので・・・
19. Posted by ヒカル   June 19, 2006 18:13
お疲れさまです。発芽風でいいかな?!そろそろ季節もいい感じですから、発芽風で圧を下げて炊きましょうか?!圧力を下げるとモチモチ感が少なくなるとマクロビオティックの方はわかってもらえるけど、一般の玄米を食べてくださっている方は食べにくくなるかも・・・。
20. Posted by macrobi papa   June 20, 2006 02:45
こんばんは、らるごさん。

ボウイのCDはレアなものまで全部揃っています。
もう日本ツアーはやらないのでしょうか・・
21. Posted by macrobi papa   June 20, 2006 02:47
こんばんは、rurikoiさん。
低温法は、吸水法としては優れた方法です。
マクロビ的に冷やしすぎるのは、難点ではありますが。

田舎の頃の話、参考になりました。
22. Posted by macrobi papa   June 20, 2006 02:50
こんばんは、なちゅーるさん。
発芽させるとピコッと芽が出ますね。
あれがかわいいです。

今回、マスコットキャラクターまで作りました。
かわいさが表現で来てればよいのですが。

23. Posted by みんぐあ   June 20, 2006 11:57
こんにちは!
米屋のみんぐあです。

素晴らしい記事に感銘を受けました!
私もこういうブログを作りたかったのですが、理科的素養の無さに早々に断念してしまいました。

これからはこちらで勉強させていただきます。(*^_^*)
リンクをはらせていただいていいですか?

24. Posted by はっぴいでい☆   June 20, 2006 13:34
発芽玄米の後編、楽しみにしています。
普段はいろいろと使い回しのきく&愛着のあるル・クルーゼでお米を炊いているのですが、美味しい食べ方を研究中です。

ところでまた近々お店に伺います(予約済み♪)
パパさんの美味しいご飯も楽しみですし、デザートも何が出てくるのか期待しています。
25. Posted by macrobi papa   June 21, 2006 01:25
こんばんは、さくらすみれさん。

後半は、発芽玄米についての解説を書いております。
アップまで時間がかかるかも、すんません。
26. Posted by macrobi papa   June 21, 2006 01:29
こんばんは、オリーブさん。

発芽玄米を作ってらっしゃるかたのお話を聞けるととても参考になります。
記事を読んでいて、気づいたことがあればなんでもコメント下さいね。
27. Posted by macrobi papa   June 21, 2006 01:31
こんばんは、ヒカルさん。

仕事ではいつもお世話になっております。
今度餃子のお題で、勝負しましょうね。
とっておきがあるんですよ。
28. Posted by macrobi papa   June 21, 2006 01:34
こんばんは、みんぐあさん。

書きたい記事を書いていたら、カテゴリーが20もある
八方美人なブログになってしまいました。
発芽玄米の記事は、後半勝負です。
前半はすべてフリ。

面白いのは後半ですよ。
29. Posted by macrobi papa   June 21, 2006 01:39
はっぴいでい☆さん。

苺が1/4はまずかったですね。
トラウマになりますよね。

いそいで体制を整えないと。
いや、大丈夫ですよ。安心していらしてください。
30. Posted by maisen   June 21, 2006 08:57
発芽玄米は政府の古米対策のひとつとして
生み出されたものと認知していましたが、
その背景には「有田水害」があったのですね。
またまた勉強させていただきました。
ありがとうございます。
後編も楽しみにしております。
感謝
31. Posted by aki   June 22, 2006 07:51
発芽玄米は買った物を炊いて食べた事があるのですが、マズくて/苦笑
食べる意味がわかりませんでした。
いつもの玄米ご飯でいいじゃん、と。
柔らかいご飯がかなり苦手なので。(もっちりは好きvv)

加工の手が加わるだけで、どんなお米を使っていてもかなり高価格で売られてるというのも疑問を感じます。
それならいいお米を素直に食べていた方がいいのでは。

水につけすぎると陰の力が強くなってよくないと聞いた事もあります。
体質にあったものを食べるのが一番ですね。
32. Posted by macrobi papa   June 24, 2006 11:10
こんにちは、maisenさん。

後半の記事は今の技術をすべて総動員して書いています。
その分時間がかかりますので、うーん。
時間が無くて、書き進まないんですよ(笑)。
33. Posted by macrobi papa   June 24, 2006 11:12
こんにちは、akiさん。

>体にあったものが一番

そうですね。たくさんの健康法がありますが、誰かに云われたからではなく、それが自分に合っているから・
そういう暮らしの方が自然でいられるのだと思います。
34. Posted by rino-lawman   June 24, 2006 17:03
はじめましてpapaさん
今回初めて書き込みさせていただきました、rino-lawmanです。

…といいましても一度お店でお会いしておりますね。
就職活動中にお邪魔させていただきました者です。
いつも楽しく拝見しております。
papaさんはお話をした時もそうでしたが、非常に学者肌で勉強熱心な印象を感じます。
謙虚でそれでいて細密な調査・考察は、理系学生として見習らわなければならないと思います。
後編も楽しみにしております。

PS:ハンドルネームは名前のロジックとなっております。
35. Posted by macrobi papa   June 26, 2006 01:04
こんばんは、rinoさん。
素敵なHNですね。

僕はやりたいことを見つけるまで、ずいぶん遠回りしました。でも遠回りしてきた道のりも、自分にとっては大切な時間だったと思います。
やりたいことにはなんでも挑戦した方が良いですよ。

つぎお会いする時を楽しみにしています。
36. Posted by 発芽玄米の栄養   October 05, 2009 14:11
はじめまして。

最近、発芽玄米の栄養に関心を持ち
健康のために食べ始めました。

いろいろと勉強させていただきありがとうございました。
37. Posted by macrobi papa   October 05, 2009 19:49
お役に立てて、嬉しいです。
またおいで下さいね。

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