December 22, 2009

実験室 10)木灰でこんにゃくは、作れるか?

『こんにゃく』という物体とは何か?
...なんて、普段、あんまり考えないで食べてるけど。
こんにゃくは、「こんにゃく芋」から作るの。

こんにゃくいも










これが、こんにゃく芋(↑)。
黒光りする巨大な玉に、赤いおできのような点々。
地上部には、緑色に紫の、病的なカラーの植物が生えるらしい。

この物体で『こんにゃく』を発明してくれた、
チャレンジャーな昔の人に感謝したい。

で、こんにゃくの固まる仕組み。

こんにゃく芋の中の【グリコマンナン】が水を大量に吸い込む性質があり、
吸い込んだまま「アルカリ」に反応して固まる。
それが『こんにゃく』。
水、いっぱい吸い込んでるから、ぶにょぶにょなのね。

この「アルカリ」には、【水酸化カルシウム】を水に溶かしたものが使われるの。

でも、昔のこんにゃくは、木灰をお湯で溶いて作る『灰汁 あく (アルカリ性)』を使って固めていたと聞きます。
それが「木灰こんにゃく」。

ベストは、『かしの木の灰』なんだけど、わら灰でも良いみたい。
こんにゃくの味は、この灰の味。
かし灰では、かし灰の味。わら灰ではわら灰の味。
水酸化カルシウムでは、水酸化カルシウムの味。

木灰こんにゃくは、柔らかめの独特の食感で、臭みがなく、
こんにゃく芋の風味が濃厚な旨さなのね。

ぷらっく










薪のクッキングストーブが主力のこふく亭。
木灰ありますよ。いっぱい。

灰に熱湯を注いで、灰汁を作る。

灰汁










江戸時代と同じやり方ですね。
詳しい灰汁の作り方→【基本の灰汁の作り方】

木灰こんにゃく作りは、明野のおばちゃんとこで修行してきました。

くりぬき










ヘタを、くり抜きます。

計量










皮は全部むかず、良く洗って、赤いこんにゃくの芽(毒)を取り除きます。
僕は全然、芋でかぶれないんだけど、
人によっては手が真っ赤になるから、ゴム手袋がお勧め。

この段階で計量。今回は1kg。

おろし










おろし金ですり下ろします。
直接、鍋の中にすりおろし、その後、水を加えるのが良いと思います。
そうしないと水に溶けない『玉』が出来ちゃうみたい。

分量は、こんにゃく芋900g(正味)に対して、
灰汁 300〜450ml
水  1300〜1550ml

結構、アバウト。

ぐるぐる










水で溶いて、火にかけます。
灰汁も様子を見ながら、少しずつ添加。
明野のおばちゃん直伝の【すりこぎ混ぜ】。

ぐつぐつ










ぐつぐつ沸いて、色が変化してくる。
水を足して、固さの調整。

こんにゃく










なんか量、多くないか?
これをひと口大に整形して、お湯で茹でるの。

で、記念すべき、『木灰こんにゃく1号』。

1










柔らかかったらしい。
茹でてて崩れた。

どんまい。灰汁を足して、もう1回。

2










『木灰こんにゃく2号』。
なんだか形になってきた。
灰汁を足して、もう1回火にかける。

3










『木灰こんにゃく3号』。
小さなドーム上に固まる。食感はいまいちだけど、
見た目は、うん、こんにゃくっぽい。

もうちょっと、灰汁を足して固めれば。

4










『木灰こんにゃく4号』...て、あれ。
どうして、1に戻るの。

失敗したこんにゃくを前に、どこまでも気持ちは暗い。
ここまで2時間もかかったのに。

落ち込んだ気持ちで、ひと口食べる。

...でも、旨いな。

明野のおばちゃん曰く、
「あー、灰汁入れすぎてもダメなのよ。何回かやって感覚で覚えてね」


もう、絶対、こんにゃく極めますから!

どーする










で、どーする。
この大量の「そぼろこんにゃく」。

ぎょーざ










こんにゃく餃子。
主原料こんにゃく。
こんにゃくと刻んだエノキを、胡麻油で炒めて、
生姜みじん切りと薄口醤油で香り付け。

あんまり旨いんで、商品化。


こんにゃく丼










こんにゃく丼。
主原料こんにゃく。
失敗こんにゃくに、生醤油、ごま油、白胡麻少々。
ごはんに海苔を散らして、生醤油を少したらす。
上にてんこ盛りのこんにゃく。

たぶん世界初。
すごく旨い。
あんまり旨すぎて、2杯食べた。
失敗もOK。大切なのはリカバリー。

そう、失敗は、良いことなのだ。

ネガティブな出来事は、僕たちにいろんなことを教えてくれる。
見ないふりするんじゃなくて、
ありがとうって受け止めれば、失敗も辛くなるの。

どんまい。
こんにゃく2回戦め。頑張りますよ。



この話のつづき
 【基本の灰汁の作り方】


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この記事へのコメント

1. Posted by 白州のウルトラマン   December 22, 2009 09:20
計量の次にひと手順抜けてませんか?
ミキサーにかけるとか、なんかしないと、次の写真の状態にはなりませんよね?
「水で溶く」のは、こんにゃく粉の場合だし、、、

私も以前、灰汁で挑戦して失敗したことがあります。
そのときは、水が多すぎて、やわやわになっちゃったんですが、きな粉と砂糖かけて「わらび餅」にしたら、おいしかったです。
そうそう、大切なのはリカバリ、、、
2. Posted by Levi   December 22, 2009 12:59
こんにちは

手作りコンニャクって美味しそう。
それも灰汁で作るなんて贅沢〜

パパさん最初に計量されて、その後は計らなかったですか?
最初から感で作る世界かな。

そぼろコンニャクって商品化したら欲しいです。
コンニャクって細かく切るのが面倒なんですよね。
お汁に入れても美味しそう。

パパさんお芋で手が痒くならないってコツがあるわけじゃないんですよね。
いいなぁ。
コンニャクって里芋や長芋の比じゃなく痒いってTVの放送で農家さんが言っていました。
3. Posted by りぼんちゃん   December 23, 2009 19:58
はじめまして!!
papaさんの文章、大好きです!
「主原料こんにゃく」に笑いころげました。
以前から読ませてもらっていまして、今回はあまりにおもしろかったのでコメントいたしました。
これから、さらに寒くなりますが、お身体に気をつけてくださいね!!
それでは!
4. Posted by Mariposa   December 23, 2009 20:50
私も、去年コンニャク作りした時に、これを食べれるようにまで研究した人は天才!と思いました。
こちらでは、蒸かしたコンニャクに木灰のアク汁を徐々に加えながらお餅の様に臼でついて、手で丸めて、茹でました。
確かに小さな玉はちょこっと残っていましたが、味に支障なし、私はオッケーでした。
手作りは臭くなくて美味しいですよね、それに餃子にコンニャク丼、めちゃくちゃ美味しそうーじゃないですか。
やっぱり、パパも天才ですね。
コンニャクの花も不思議な花ですが、その後に真っ赤で、大仏様の頭のブツブツみたいなのがマイクの周りにくっついちゃったみたいな『実』?『種』も強烈です。
今年咲いたので、写真撮りましたが、見たいですか?(笑)

5. Posted by macrobi papa   December 23, 2009 23:43
白州のウルトラマンさん、こんばんは。

プロセスがひとつ抜けていましたので、足しておきました。ありがとうございます。

失敗は成功の素。
昔ながらの言葉ですが、今更、それを実感している感じです。
6. Posted by macrobi papa   December 23, 2009 23:57
こんばんは、Leviさん。
手がかゆくならないのは、慣れみたいなものじゃないかと、勝手に推測しています。

昔はかぶれたんです。
この仕事、やってるうちに、そういうのが段々大丈夫になってきたように感じます。
洗剤荒れもしません。

>最初から感で作る世界かな。

結構、左脳的にやっています。

こんにゃくの原材料は、基本、「こんにゃく芋」「灰汁」「水」の3つだけ。
「かん」で作る要素は最小限に抑えることが出来るはずです。

5回やってみて、比率1:0.4:1.48で、配合を再構成し、完成した状態を観察して、次回の配合比を変化させています。
レシピ化した場合、誤差小さじ1杯の計算になるはず。
その場合、最後の微調整だけ「勘」に頼れば良いので、誰でも作れるようになります。

うー。
文章で書くと、何、云ってるんだか分からない。
7. Posted by macrobi papa   December 24, 2009 00:01
りぼんちゃん、こんばんは。
文章も、お店のごはんも。
お客様に喜んでもらいたい云う気持ちでは、おんなじなのかもしれません。

>主原料こんにゃく。

分かって頂けますか。
この部分。
さすがです。

喜んでもらえると、嬉しくて。
なんか張り合いが出ます。
8. Posted by macrobi papa   December 24, 2009 00:04
こんばんは、Mariposaさま。

>手作りは臭くなくて

そう、不思議です。
なんで全然臭くないんでしょう。

こんにゃくと云う植物。噂には聞きますが。
なんかすごいですね。
是非みたいです。
9. Posted by .   December 26, 2009 17:32
手で練らないんですの?
昔、父とよく神山というところまで
手造りこんにゃくを仕入れに行ってましたの。
そこのおばさまが、
「機械で練ったら、
さくさくして美味しくないんよ。
熱いん我慢して、手で練ったらな、
こうやって、こしが出てくるんよ。」
と、おっしゃってました。
煮詰めた後、良く練ってから、
成形して、湯がくんだとばかり思ってましたけど。
10. Posted by macrobi papa   December 27, 2009 00:13
うーん、おばちゃんは手でも練ってました。
手かな。

やっぱり手が違うのでしょうか。
11. Posted by mayu   December 28, 2009 01:07
本日は美味しいお料理をありがとうございました。

本当に素敵なところで驚きとともに、癒されました。

また春になったらぜひおじゃましますね。

これからも頑張ってください
12. Posted by macrobi papa   December 29, 2009 23:19
mayuさん、ありゃ、モデルさんだったんですね。エライきれいな人が来たなぁ、思ってました。

ブログでのご紹介、ありがとうございました。
また来て下さいねー。
13. Posted by 田舎のおばさん   February 10, 2010 00:32
5 火にかけて水や灰汁を入れるとき、大きなしゃもじで、よーく練ります。 小豆のこしあんを作るときのような要領でするといいですよ。
とにかく練ること。 火にかけながら練ることです。
練るほどにキメの細かいこんにゃくができます。

この作り方だと、ダマになりますよね。

練って、ネットリしてきたら水をかけた型にいれてしばらく置きます。 固まったら四角く切るか、丸めるかして湯がきます。

顔晴ってください!!
14. Posted by macrobi papa   February 10, 2010 07:30
奥出雲食房、懐かしいですね。

このれしぴには、後で全量の水を入れる書いたんですが、それだとやっぱり「ダマ」になりました。
ある程度の水に溶いて、加熱しながら少しずつ灰汁を入れていくのがよいようです。

アドバイス、さんこうにしてもう一回取り組みます。
顔晴ります。

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